おばあちゃんが徘徊をするようになって

おばあちゃんが徘徊をするようになって、両親はついに施設に入所させる決断をしました。
おばあちゃんはその時、87歳でした。
おばあちゃんは母の親で、母の兄夫婦と一緒に住んでいました。
一緒に住んでいたといっても、敷地内に離れがあってそこにおばあちゃんは住んでいました。
おじいちゃんが働かない人だったので、おばあちゃんが昔からなんでも一人で頑張っていたそうです。
母も母の兄もそんなおばあちゃんに感謝をしていたようですが、おじさんの奥さんはおばあちゃんと仲が悪かったようです。
そのため、近くに住んでいた母がおばあちゃんの身の回りの世話をしに毎週二日ほど通っていたようです。
でも、だんだんとおばあちゃんが年をとって身の回りのことができなくなってからおばあちゃんを母が引き取ることになりました。
うちに来た時には、おばあちゃんはすっかり昔と別人のようになっていました。
背を丸めて、一日中テレビを見ていました。
ご飯を食べるときには、母がずっと付き添って食べているのを見ていました。
私も、時間のある時には母の代わりにおばあちゃんのご飯をみていてあげました。
トイレは、母が見てあげないともう一人ではできませんでした。
おばあちゃんの変化は少しずつ、少しずつありました。
最初は、ご飯を食べたのにまだ食べていないと言い出した時です。
はじめは冗談をいっているのかと思いました。

でも、真顔でいうおばあちゃんを見てついにその時が来たのだと家族で覚悟を決めました。
その後は、私のことも母のこともおじさんのことも忘れてしまいました。
おばあちゃんは、だんだんと子供にもどっていきました。
一番心に残っている出来事は、私が会社帰りに買ったケーキを見て、わぁ、きれいって手をたたいて喜んだことです。
その時のおばあちゃんは、目を輝かせていました。
おばあちゃんが喜んでいてくれて嬉しいのに、私は悲しくなっていく気持ちを止めることができませんでした。
昔、私がおばあちゃんにケーキを買って行った時には、ありがとうねって優しくいってくれたのにって思い出したからです。
その後、おばあちゃんは夜中に家を出て近所を徘徊しました。
一度目は、母も父も私も万が一のことがあったらと思って、必死に探しました。
幸い、おばあちゃんは近所の店の前でぼーっと立っていてけがもありませんでした。
二度目は、警察に保護されました。
一度目のことがあったので、おばあちゃんの洋服に名前と電話番号を書いておいたので連絡がきたのです。
父と母は、その時自分たちではもう限界だと気づき、おばあちゃんを施設に入所させました。
入所させる前に、おばあちゃんを旅行に連れて行ってあげました。
おばあちゃんは、ニコニコしていました。
できれば、ずっと家でおばあちゃんと一緒に住んでいたかったけど、自分たちにも生活があります。

旅行は、おばあちゃんへのお詫びの気持ちでした。
でも、おばあちゃんにその気持ちが伝わっていたかはわかりません。